猫の高アルドステロン血症

症例内容

日本猫、去勢雄、12歳の症例です。食欲不振、活力低下、ふらつきを主訴に来院されました。各種検査を実施したところ血液検査にて低カリウム血症(2.2mmol/L)が認められ、また画像検査では右副腎の腫瘤(1.6×1.8×1.7cm)が認められました(図1)。

図1

問題となっている臨床症状は低カリウム血症からきている可能性が高いと判断し、入院下でカリウムの補正を実施したところ速やかに回復が認められました。また外部検査にて血中アルドステロン濃度を測定したところ580pg/mlと高値が認められたことから、本症例は右副腎腫瘤を原因とした原発性高アルドステロン血症であると判断し、右副腎腫瘤の摘出を実施しました。
 上腹部を正中切開し、右腎頭側の後腹膜内に脂肪に包まれた右副腎腫瘤を確認しました。後腹膜を切開し、周囲の脂肪組織や隣接した後大静脈や右腎静脈から腫瘤を丁寧に剥離していくことで腫瘤の摘出を行いました。細かな血管処理を確実に行うことで最小限の出血で摘出することが可能でした(図2,3,4,5)。

図2

図3

図4

図5

摘出した右副腎腫瘤は病理組織学的検査にて副腎皮質腺癌と診断されました。症例は術後順調に回復し、血中アルドステロン濃度が正常化したことで低カリウム血症が認められることもなくなりました。
 猫の副腎腫瘍は犬とは異なっており、発生頻度が少なくまれな疾患です。犬の副腎皮質由来の腫瘍はコルチゾールを産生するものが多い一方、猫ではアルドステロンを分泌する症例がしばしば認められ高アルドステロン血症を引き起こすことが知られています。低カリウム血症は様々な原因で日常的に認められる病態ですが、今回のようなケースもまれに認められるため原因の鑑別疾患の一つに考慮する必要があります。