犬の口腔内乏色素性悪性黒色腫

症例内容

パグ、避妊雌、13歳の症例です。2週間前に口に血が付着しているのを見つけ、口腔内を確認したところ腫瘤病変を認めたということで当院に来院されました。来院時には左下顎口唇部に5.0×3.0×2.0cm、硬結感あり、一部潰瘍化を伴う腫瘤が確認されました(図1)。

図1

細胞診では少数の軽度異型性を伴う紡錘形細胞が採取されたことから非上皮系悪性腫瘍を疑い、全身状態に大きな問題が認められなかったため、CT検査および腫瘤の生検を実施しました。その後腫瘤の増大スピードが非常に速く、QOLの低下を招くことが懸念されたため、早期の外科的切除が必要であると判断しました。後日に外科切除手術(中央部の左側下顎骨亜全切除術、左側下顎リンパ節切除術)を実施しました。腫瘤病変は病理組織学的検査の結果、悪性腫瘍(悪性黒色腫を疑う)と診断されました。
手術はまず左側下顎リンパ節を切除。腫瘤の口唇浸潤部は口唇に加えて周囲の皮膚も切除しました。尾側についてはアプローチとして口角切開を加え、後臼歯を含めて切断しました。また閉鎖に際して下側口唇を寄せたことで口角が頭側へ移動したため、人工口唇形成を行いました(図2,3,4)。

図2

図3

図4

顔面は血流およびリンパ流が豊富であるため、術後は一時的ではありますが軟部組織の腫脹が顕著でした。ただその腫脹も2,3日で軽減し、呼吸や食欲も問題なかったため術後4日で退院となりました。退院1週間後には術創も問題なく、体調も良好でした(図5)。

図5

改めて提出した病理組織学的検査の結果、左下顎腫瘤は乏色素性悪性黒色腫、左下顎リンパ節は反応性リンパ節(腫瘍細胞の転移は見られない)と診断されました。標本上、腫瘍組織は切除されていますが、犬の口腔内悪性黒色腫、特に乏色素性タイプは局所再発性および組織浸潤性が非常に高い悪性腫瘍です。また下顎および浅頚リンパ節への転移が多いことも知られています。そのため本症例も今後のモニタリングが重要であり、現在経過観察中です。