猫の尿管結石

症例内容

猫の尿管結石は腎盂内で形成された結石が尿管に流れてしまい、尿管を閉塞(半閉塞)させてしまうことで問題を起こします。短期的には急性尿管閉塞を起こすことで罹患側の腎臓からの尿排泄が停止あるいは腎に甚大な負荷がかかります。中~長期的には閉塞部の線維化や罹患側の腎機能に致命的で不可逆的な障害を引き起こす可能性があります。腎臓は左右に1つずつある臓器のため片方の腎臓が障害を受けても腎数値の上昇を伴わないことや症状がわかりにくいことが多く、知らないうちに機能が失われてしまっていることも少なくないです。そのためすでに片腎の機能が低下した状態で対側に急性尿管閉塞を起こし、急性腎不全として来院されるケースが大多数を占めます。当院では内科療法で対応困難な場合の猫の急性尿管閉塞に対し、状況に合わせた外科手術にて治療を行っています。そのうち代表的な3つの手術を紹介させていただきます。
1. 尿管切開
結石が閉塞している尿管直上を切開し結石を摘出し縫合する術式になります。最もシンプルな方法ですが、猫の尿管は細く術後に狭窄するリスクや同部位における再閉塞を起こしやすいリスクがあります。基本的には腎盂内に結石がない、閉塞部位の線維化が認められない、単一の結石が閉塞しているなど条件がそろった場合に当院では行っております。(図1、図2)

図1

図2

2. 尿管膀胱新吻合
結石が閉塞している部位よりも近位の尿管を切断し、膀胱に新たに繋ぎ直す(吻合する)術式になります。利点としては閉塞部の線維化などの影響を受けにくいこと、尿管の長さが短くなり近位の太い部位で膀胱とつなぎ直すことにより結石による尿管閉塞を起こしにくくなる利点があります。吻合部の狭窄リスクや手術が煩雑になる一面はありますが、適応となる症例が多く近年猫の尿管結石で選択されることの多い術式になります。(図3、図4、図5)

図3

図4

図5

3. SUBシステム(人口尿管による尿管バイパス手術)
人口尿管を用いて腎臓と膀胱を直接つなぐバイパス路を形成する手術になります。自己尿管に依存しない為、腎盂や尿管に結石が多発している症例や他の手術でうまくいかなかった症例などが適応になります。他の手術に比較し短時間で容易に設置できる点や短期的な手術成功率が高い点、両側で実施が可能な点などの利点があります。システム自体にも改良がなされており、従来よりも合併症が起こりにくい工夫がなされております。一方デバイスが高価で手術費用が高く、生涯に渡り定期的なメンテナンスが必要になる側面がある他、細菌感染に弱く慢性化しやすい点などが欠点になります。(図6、図7、図8)

図6

図7

図8